巡視船紀行(1)

 鉄道編が続きましたが、今回からは船舶編になります。九月の巻(おまけ)「巡視船紀行」は、荒川下流を運航する巡視船に乗ったとの想定で書きました。文中に出てくる設定等を3回に分けてご紹介します。



 巡視船「あらかわ号」

 この巡視船に乗るには、荒川下流河川事務所への申込が必要(火~金限定、団体利用)ですが、時には乗船会を兼ねた催しが開かれるので、そうした機会を見つけて事前申込する方が手っ取り早いでしょう。(→一例
 *小説文中では、あくまで仮想の設定としています。あしからず。


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...その名もズバリ「巡視船で行く荒川下流の旅」、オプショナルツアー企画である。前座がオプションというのも変なら、ツアーの方が本日のメインイベント要素が強いというのもまた妙である。九月十七日は祝日だが月曜日。環境情報センターはもともと月曜定休。千歳も同じく定休日。祝日が月曜の場合、休日が減るのと同じになるので、割を食う訳だが、今回の企画はその変則性が幸いした。予約が可能なのは平日のみ。ただし、臨時貸切となると、月~金で祝日に当たる日なら可とのこと。これには、河川事務所の課長さんが一役買ってくれた。



 五色桜大橋

 荒川河口から17kmほどのところに、この大橋はあります。首都高速道路(中央環状王子線)の上下線が2階建て(ダブルデッキ式)になっているのが特徴です。(→詳細情報

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 巡視船の概要、下流の概況などに続き、ちょっとした観光案内が入る。苦手な先生が不在の分、徐々に調子が上がってきた石島課長である。
 「この辺一帯は、足立桜堤ですね。で、見えてきたあの橋、高速道路の上下線が二階建てになっているのが特徴です。五色桜大橋と言います。」
 「なんか、桜、桜ってどうなってるの? 名前呼ばれてるみたい」
 「そりゃ、櫻さんあっての荒川ですからねぇ」
 「まぁ、千さんたら」
 何故か課長は乗船名簿をチェックし出して、「今日は櫻さんがいらっしゃいますね」
 「あ、ハイ」
 千歳の隣で手を挙げる女性。本当に名前を呼ばれるとは。...




 引き波禁止

 河口から約14km。西新井橋の上流側両岸(水際)には天然のヨシ原があります。船舶が大波を立てると、その自然地の浸食が進んでしまうため、このような通航標識が掲げられている訳です。(「引き波禁止 ここまで」、つまり西新井橋までは要減速!となります。)

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 扇大橋を過ぎたところで、再び課長がマイクを取る。波が護岸を浸食するのを防ぐための通航ルールと標識についての話になった。この辺りのヨシ原は「自然保護区域」に重なる。ヨシ自体、ある程度の消波効果を持っているものの、船舶が大波を立てて通ると、さすがに効かず、水際が浸食されてしまうことになる。そのため、減速と「引き波禁止」の指定になっているんだとか。
 「橋みたいな記号に赤で斜めに引いてあるのって、そういう意味だったんだぁ」
 「橋の下は通航禁止とかだと思ってたけど、あれって波だったんだね」
 「石島さん、あれじゃ波だってわからない、って意見が...」
 櫻が課長にツッコミを入れている。「あ、いやぁ、そればっかりは...」
 先生不在でもこれじゃ先が思いやられる。

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  • 西新井橋から荒川と河川敷を望む

    Excerpt: 荒川河口から約14kmの地点になります。巡視船紀行(1)では、船から見上げた西新井橋を紹介しましたが、今回はその橋上からの眺めなどを少々。(小説では「十月の巻 おまけ」~グリーンマップはブルー(→PD.. Weblog: 漂着モノログ(real version) racked: 2008-03-31 15:17