増水時の漂流ゴミ

 写真は、1999年8月15日の「戦後三番目増水」の時のものです。小説では、当時の記憶をもとに、少々大げさに書いてみました。(その後、9月に入り、台風9号が通過したら、これに匹敵するような増水になりました。そのため、小説では再度、増水時漂着ゴミについて書くことになります。)

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「八月の巻 おまけ」~非日常 より

...荒川本流が視野に入る。彼は目を疑い、そして言葉を失った。
 向かって左方向、いつもの橋の脚に付されている水位を示す表示に対して、三から四の間を川が洗っている。いわゆる大潮の時でも二前後なので、明らかな増水である。そしてひと目でわかる濁流。曇りがちな空から時に太陽が顔を覗かす午前八時。橋の中央から流れを追ってみることにした。
 「あぁ、漂流ゴミが...」 昨夕の雨は、中流や上流にも降り注いだようで、様々な物体を運んでいる。枝葉や木片の塊が列を成しながら、蛇行しながら、流れる。それらに混じって、ペットボトル、空き缶、食品トレイ、発泡スチロール片といった定番ゴミの数々。よくよく見れば、サッカーボール、塗料缶、灯油を入れるポリタンク... 浮遊しやすいものが漂流するのはわかるが、重量がありそうな品々まで押し流されているから壮絶。一例としては、一升瓶、タイヤ、トタンの扉、といったところか。双眼鏡なしでも、こうした類は判別がつく。細々したものはさすがに肉眼では識別できないが、おそらく夥しい量が流れに乗っているものと思われる。「干潟でキャッチできればまだいい方、ということか」 デジカメは連写モード。ブツクサやりながらも、撮りまくっている。

<中略>

 話によると、これだけの水位でも、四メートルよりは下なので「レベル1」どまり、水防団が待機する段階に当たるとのこと。掃部公にも娘にも頭が上がらない石島氏だったが、ここは現場担当者として面目を保ちたいところ。
 「九十九年は、戦後三番目、六・三メートル(岩淵水門上)を記録。その時ほどじゃ、ありません。」 とは言っても、荒川畏るべし、には違いない。甘く見ては不可ない。

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